\有坂さんの小麦粉/
マルカフェの焼くクッキーの原材料は、とってもシンプルです。「美味しい小麦粉」と「美味しい油」。その二つが味の決め手だと思っています。
今日は私たちの小麦粉を栽培してくれている、南佐久郡南牧村の有坂満さんと公子さんご夫婦の作り出す、愛情あふれる循環したものづくりのおはなしをします。
「キミ楽」という変わった名前がついたその小麦粉は、野辺山高原に程近い、標高1370mほどの畑で栽培されています。
晴れ晴れとして澄み渡る青空に、悠々と育つその小麦の栽培は、奥様の公子さん担当です。
その昔、塩尻市の知人からもらった小麦粉を撒いてみたところ、とても美味しい小麦粉が育ったそう。「なんという名前の小麦粉だろう?」と公子さんは調べましたが、結局名前は分からずじまい。
そこで、公子さんはご自身でその小麦粉に「キミ楽(キミラク)」という名前をつけました。今も毎年その種を大切につないで栽培し続けています。
「この小麦粉を食べて、君も私もああ楽し」
という気持ちで、君(キミ)と私の楽しさ(ラク)を表現しているそうです。とってもチャーミングですね。
そしてその小麦粉が育つ大地で、公子さんはこれがまたとても美味しいじゃがいもやにんじんを作ります。この根菜を食べると、「土の大切さ」に気がつくのです。
その土作りを支えているのが、夫の満さん。
満さんは平飼いで鶏を飼っていて、その鶏糞を畑に撒くことで美味しい小麦粉や野菜が育つという、素敵な循環の仕組みが作られています。
ただご夫婦二人三脚の姿が素敵というだけではなくて、ものづくりに取り組む探究心や好奇心も素晴らしいのです。
満さんの育てる鶏たちは、満さんの手作りした餌を食べています。その材料はおから、ふすま、
もみ殻、ゴマの搾りかす、魚粉、牡蠣殻、など。
この「餌」を私たちも見せてもらったことがありますが、とってもいい匂いがして美味しそうなんです。
おからは地元のお豆腐屋さんのもので、100%遺伝子組み換えの無いものを。
小麦粉のふすまは、もちろん有坂さんの小麦粉を。
素材選びからそれらの調合までこだわる 満さんは、博識高い方で、普通は廃棄されてしまうものを生かし、それらの素材を「発酵させる」という工夫もしています。
有坂さんの鶏たちを見学させていただいたこともありますが、いわゆる「臭い」がなく、皆、綺麗な姿をしています。
そんな元気な鶏達の糞を、有坂さんご夫婦はご自分達の農業に活かしたり、地元の若手農家が使う肥料に譲ったりしているのです。
ここまでおはなしすれば、有坂さんの卵の味も伝わる事でしょう。
毎週、南牧村から店舗のある佐久市平賀まで、満さんが卵を配達に来てくれます。
その卵は、臭みが全くなく、すっきりときれいな味。「無味無臭」ということではなくて、とてもピュアな味がして、他の卵とは確かに違うのです。
特に美味しいのが半熟。
お店にはもちろん、私たちの毎日の食卓にものぼるのですが、ごま油をしいたフライパンを強火で熱し、卵をわり入れたらわずか5秒。火を止め、下の白身だけが少し焼かれた状態になったところに、醤油を垂らして食べるときの半熟卵の、それはそれは美味しいこと。
我が家の子供達は起きると「とろとろごはんがいい!」と言って、毎朝こればっかりです。
MaruCafeの店舗のランチでも、頻繁に有坂さんの卵やじゃがいも、人参がメニューに登ります。
「キミ楽」の小麦粉も、クッキーやケーキとしてのデザートに欠かせない存在です。
これらの素材は、私たちにとって特別な存在です。有坂さんご夫婦の愛情深いお人柄と、探求熱心な姿勢が生み出す循環の成果に、日々触れさせていただいていることにただただ感謝しています。