私たちの加工品や料理に多く登場するエゴマについてお話しします。
エゴマは佐久地域では「いくさ」とも呼ばれ、郷土食として親しまれてきた食材です。
昔に比べるとエゴマを栽培する人も減り、食卓に登ることも少なくなってしまいましたが、最近ではその健康効果が注目されていますので、ご存知の方や日頃から召し上がっている方もいらっしゃるかもしれません。
「えごま」には人間の体内で合成、蓄積できない「必須脂肪酸」のα-リノレン酸という成分が多く含まれています。
血液をサラサラに保つ効果や免疫機能を正常化する働きもあるため、アレルギーの予防や軽減にも良いそうです。
他にも食物繊維、カルシウム、鉄分、亜鉛、ビタミンB1が豊富に含まれる食材です。
このα-リノレン酸は熱に弱いとされていますが、「 180℃, 70分までの短時間加熱では, α-リノレン酸の残存率も90%以上であり, 栄養的にも食品衛生上も支障があるほどではない」とされています。(参考文献:日本栄養・食料学会誌)
その点で、私たちの加工品もエゴマの栄養素を損なわないような方法で作っています。
少し独特の味わいがしますが、かえってその「クセ」が魅力となっています。
エゴマを栽培してくれている大田さんが、エゴマの種まきをすると聞き、畑へ伺いました。
例年5月半ばに種まきをし、およそ1ヶ月後に育った苗を畑に定植するそうです。
エゴマは他の野菜や油脂植物よりも生命力が強く、むしろ肥料をあげたり除草をしないで「野性的に育つ」ほうが合っているとのこと。
しかしこのところの異常気象で、昨年はエゴマの収量が半分にも減ってしまいました。7月の猛暑による水分不足が原因です。
丈夫なエゴマといえども近年の気候変動には対応できないのでしょう。
やはり全ての作物が無事に収穫期を迎えることは、奇跡的なことゆえに、昔から人々は祈りを捧げてきたのかもしれません。
畑に伺ったのは2019年5月21日。
大田さんの畑では微生物の力を生かして作物を栽培します。肥料に頼らず、微生物の力を借りるという考えのもと、「無肥料栽培」を行っています。
長年に渡り農薬や化学肥料を使っていない土壌だからこそ、微生物が元気に生きられるのだそうです。
もし仮に農薬を使ってしまうと、土の中の微生物が死んでしまい、またそれらが復活するには10年かかると言われています。
この日は、仲間の方と3人で3000株ほどの準備をしていました。種を撒く小さなマス目のあるポット一つに対して、3粒の種を蒔きます。
取り残しのない様に、二人掛かりでチェックをしながら慎重に作業をしていました。
このほか、畑に直播をする種から育つ苗も含めれば、大田さんは約6000株のエゴマの苗を栽培するそうです。
今年は無事に多くのエゴマの苗が実を結ぶ時が来ますように・・・。
大田さんに好きなエゴマの食べ方を伺いました。
エゴマをすりつぶしてご飯やサラダにかけてシンプルに召し上がるのがお好きとのこと。
日常の食卓にエゴマがのぼっているのですね。
一粒万倍を願って、私たちも店舗のプランターにエゴマの種を蒔きました。
芽が出て、いつの日か実をつける日が、ますます心待ちになりました。
そして、種まきから始まる収穫までのプロセスの一部を体感することで、素材の尊さを改めて感じられる良い機会となりました。